一気に存在を知らせ、集客したい!
動物病院の外壁に描いた壁画です。
お客様からの依頼は、
- 知らない土地で初めて開業するので不安だ。
- 通常だと、うまくいっても軌道に乗るまでに3年位はかかる。
- できるだけ短期間でこの地域の人に当院の存在を知れ渡らせて欲しい。
- 動物のことを気軽に相談できるような雰囲気にして欲しい。
ということでした。
要約すれば、「事業の垂直立ち上げ」と「親しみやすいイメージの形成」です。
短期間で存在を告知、浸透させるには、
まわりの環境の中で「突き抜ける」必要があります。
通常の看板では到底無理です。
より「看板」ではない手法が効果的です。
デザイン・ポリシー
そこで立てたデザイン戦略はこうです。
- 誰もが目を止める意表を突いたインパクト。
- 強烈な印象と話題性を生む非日常性。
- 過激や嫌みのない表現で受容生を高める。
- ほのぼのとした温かさとユーモアで好感度を上げる。
壁画のデザイン
今回の案件で絶対に押さえなければならないデザインのポイントです。
- 圧倒的に人の目をくぎづけにするシンボリックなモチーフと構図にする。
- 一目で動物病院とわかるモチーフを選ぶ。
- 奇抜な中でも住民の共感を得るために周囲の環境と調和させる。
結果、こんなデザインになりました。
- ワンちゃんが体温計を加えている姿でほのぼの感を演出しました。
- 絵を大きく見せるために、建物からはみ出し空につなげました。
- 出窓も絵に取り込み、気球のゴンドラに見立てました。
*出窓に猫のぬいぐるみを置くと、猫も気球に乗っているように見えます。 - ワンちゃんの耳が2階の風呂場のルーバー窓に当たって悩みましたが、逆手にとってバンドエイドを耳に貼っていることにしました。このことで、よりほのぼの感が出て、「重病でなくても、気楽に相談できるやさしい先生のいる病院」というイメージがアピールできました。
- 院名を表示すると看板になってしまいストーリー性が壊れるだけでなく、見る人の共感がなくなってしまうため院名は壁画の中には入れないことにしました。道路側の入口に小さな袖看板をつけただけです。これがまた、思わぬ効果を生みました。「あの建物は何屋なの?」と気になって仕方ない存在になり、それが印象づけに大いに貢献したのです。
- 絵の広がり感を出すために、本物の風船が宙に浮いているようにトリックアートし立てで描きました。通りかかった人が、「あの風船、本物が浮いているみたいだ」と口々にするのでクチコミで話題が広がりました。
効果バツグン「地域の名所」に!
開業して8ヶ月程経った頃、お客様が満面の笑顔で会社にお見えになりました。バツグンの集客でもう軌道に乗ったというのです。何とそれから1年程して、手狭になったので広い建物に移るというのです。壁画が余りにも知られ、交通の名所にまでなったので隣の建物に引っ越されました。
しかも後日談があります。
病院の移転で、当初現状復帰のため壁画を消さなければならなかったのですが、大家さんからの申し出で、「この壁画が地域の名所になってしまったので、町の財産として残したい」というのです。その後、別のテナントさんがこの壁画のままで入居されました。
こんな風に、ビッグアートの壁画は、狙った目標に向けて緻密な戦略と計算をしてタネと仕掛けをふんだんに盛り込んだ戦略的な集客ツールなのです。